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二 - 9(2 / 2)

うそをつけと主人は打ち遣(や)ったようにいう。

「是非共二三十羽の孔雀を捕獲致さざる可(べか)らずと存候(ぞんじそろ)。然る所孔雀は動物園、浅草花屋敷等には、ちらほら見受け候えども、普通の鳥屋抔(など)には一向(いっこう)見当り不申(もうさず)、苦心(くしん)此事(このこと)に御座候(そろ)。……」

独りで勝手に苦心しているのじゃないかと主人は毫(ごう)も感謝の意を表しない。

「此孔雀の舌の料理は往昔(おうせき)羅馬(ローマ)全盛の砌(みぎ)り、一時非常に流行致し候(そろ)ものにて、豪奢(ごうしゃ)風流の極度と平生よりひそかに食指(しょくし)を動かし居候(おりそろ)次第御諒察(ごりょうさつ)可被下候(くださるべくそろ)。……」

何が御諒察だ、馬鹿なと主人はすこぶる冷淡である。

「降(くだ)って十六七世紀の頃迄は全欧を通じて孔雀は宴席に欠くべからざる好味と相成居候(あいなりおりそろ)。レスター伯がエリザベス女皇(じょこう)をケニルウォースに招待致し候節(そろせつ)も慥(たし)か孔雀を使用致し候様(そろよう)記憶致候(いたしそろ)。有名なるレンブラントが画(えが)き候(そろ)饗宴の図にも孔雀が尾を広げたる儘(まま)卓上に横(よこた)わり居り候(そろ)……」

孔雀の料理史をかくくらいなら、そんなに多忙でもなさそうだと不平をこぼす。

「とにかく近頃の如く御馳走の食べ続けにては、さすがの小生も遠からぬうちに大兄の如く胃弱と相成(あいな)るは必定(ひつじょう)……」

大兄のごとくは余計だ。何も僕を胃弱の標準にしなくても済むと主人はつぶやいた。

「歴史家の説によれば羅馬人(ローマじん)は日に二度三度も宴会を開き候由(そろよし)。日に二度も三度も方丈(ほうじょう)の食饌(しょくせん)に就き候えば如何なる健胃の人にても消化機能に不調を醸(かも)すべく、従って自然は大兄の如く……」

また大兄のごとくか、失敬な。

「然(しか)るに贅沢(ぜいたく)と衛生とを両立せしめんと研究を尽したる彼等は不相当に多量の滋味を貪(むさぼ)ると同時に胃腸を常態に保持するの必要を認め、ここに一の秘法を案出致し候(そろ)……」

はてねと主人は急に熱心になる。

「彼等は食後必ず入浴致候(いたしそろ)。入浴後一種の方法によりて浴前(よくぜん)に嚥下(えんか)せるものを悉(ことごと)く嘔吐(おうと)し、胃内を掃除致し候(そろ)。胃内廓清(いないかくせい)の功を奏したる後(のち)又食卓に就(つ)き、飽(あ)く迄珍味を風好(ふうこう)し、風好し了(おわ)れば又湯に入りて之(これ)を吐出(としゅつ)致候(いたしそろ)。かくの如くすれば好物は貪(むさ)ぼり次第貪り候(そうろう)も毫(ごう)も内臓の諸機関に障害を生ぜず、一挙両得とは此等の事を可申(もうすべき)かと愚考致候(いたしそろ)……」

なるほど一挙両得に相違ない。主人は羨(うらや)ましそうな顔をする。

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