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十一 - 3(2 / 2)

「今度は君の番だよ。こっちで待ってるんだ」と云い放った。

「え?もう打ったのかい」

「打ったとも、とうに打ったさ」

「どこへ」

「この白をはすに延ばした」

「なあるほど。この白をはすに延ばして負けにけりか、そんならこっちはと――こっちは――こっちはこっちはとて暮れにけりと、どうもいい手がないね。君もう一返打たしてやるから勝手なところへ一目(いちもく)打ちたまえ」

「そんな碁があるものか」

「そんな碁があるものかなら打ちましょう。――それじゃこのかど地面へちょっと曲がって置くかな。――寒月君、君のヴァイオリンはあんまり安いから鼠が馬鹿にして噛(かじ)るんだよ、もう少しいいのを奮発して買うさ、僕が以太利亜(イタリア)から三百年前の古物(こぶつ)を取り寄せてやろうか」

「どうか願います。ついでにお払いの方も願いたいもので」

「そんな古いものが役に立つものか」と何にも知らない主人は一喝(いっかつ)にして迷亭君を極(き)めつけた。

「君は人間の古物(こぶつ)とヴァイオリンの古物(こぶつ)と同一視しているんだろう。人間の古物でも金田某のごときものは今だに流行しているくらいだから、ヴァイオリンに至っては古いほどがいいのさ。――さあ、独仙君どうか御早く願おう。けいまさのせりふじゃないが秋の日は暮れやすいからね」

「君のようなせわしない男と碁を打つのは苦痛だよ。考える暇も何もありゃしない。仕方がないから、ここへ一目(いちもく)入れて目(め)にしておこう」

「おやおや、とうとう生かしてしまった。惜しい事をしたね。まさかそこへは打つまいと思って、いささか駄弁を振(ふる)って肝胆(かんたん)を砕いていたが、やッぱり駄目か」

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