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十一 - 10(2 / 2)

「わからないね。戸袋のなかか」

「いいえ」

「夜具にくるんで戸棚へしまったか」

「いいえ」

東風君と寒月君はヴァイオリンの隠(かく)れ家(が)についてかくのごとく問答をしているうちに、主人と迷亭君も何かしきりに話している。

「こりゃ何と読むのだい」と主人が聞く。

「どれ」

「この二行さ」

「何だって?quid aliud est mulier nisi amiciti inimica[#「amiciti 」は底本では「amiticiae」]……こりゃ君羅甸語(ラテンご)じゃないか」

「羅甸語は分ってるが、何と読むのだい」

「だって君は平生羅甸語が読めると云ってるじゃないか」と迷亭君も危険だと見て取って、ちょっと逃げた。

「無論読めるさ。読める事は読めるが、こりゃ何だい」

「読める事は読めるが、こりゃ何だは手ひどいね」

「何でもいいからちょっと英語に訳して見ろ」

「見ろは烈しいね。まるで従卒のようだね」

「従卒でもいいから何だ」

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